こんにちは!
岡山県倉敷にある『美観堂』というお店で働いている、久保といいます。
『美観堂』は倉敷の観光地・美観地区にあるライフスタイルショップ。
「岡山・倉敷のほんとうにいいものを」をコンセプトに、私たちスタッフが実際に生産者さんにお会いし、「ほんとうによいなあ!」と思ったものを取り扱っています。
今日は、このページに辿り着いてくださり、ありがとうございます。
このページでは、『美観堂』とお付き合いのある『サンカカオ』さんについてご紹介しています。
インタビューも織り交ぜながら、深〜いところまでお話を伺っているので、ぜひ最後まで楽しんで読んでもらえれば嬉しいです。
『SUNCACAO(サンカカオ)』とは
岡山県倉敷市にて、夫婦でチョコレートを作っている『SUNCACAO』。
実は、『美観堂』の姉妹店である『はれもけも』の店長・ちゃい(加藤泰)さんが夫婦で始めたお店なんです。
一番のこだわりは「Bean to Bar(ビーントゥバー)」。
カカオ豆を仕入れて選別・焙炒・粉砕するところから、調温・成形・包装に至るまで。
チョコレートが出来上がるまでの全ての工程を、自家工房で行っています。
『SUNCACAO』という店名は、 “太陽のように元気を与えてくれるチョコレート” でありたいという思いを込めて。
2018年のオープン以来、イベントにも積極的に参加!
素材を生かした奥深い味わいはもちろんのこと、チョコレートへの真摯な姿勢に触れてファンになる方も多いんですよ…!
“ 優しいBean to Bar ” を目指して
『SUNCACAO』では、以下の3つのことを大切にしています。
●身体に優しい
できるだけシンプルに作ること。
グルテンフリーや乳製品フリーなど、体に負荷の少ない素材を使ったチョコレート作りに取り組んでいます。
●環境に優しい
簡易包装を心がけています。
また、生産過程で出るカカオ豆の殻などの堆肥利用や、2021年1月にオープンした店舗ではチョコレートの量り売りなども行っています。
●生産者に優しい
チャイルドレイバーフリー、フェアトレードなど生産地支援などを行う団体からカカオ豆を仕入れています。
※チャイルドレイバーフリーとは “児童労働のないこと” を指します。
ちなみに、「口だけはかっこ悪いから」と海に行く際は、頻繁にゴミ拾いをされている、ちゃいさんご一家。
9月19日の「WORLD CLEANUP DAY(ワールドクリーンアップデー)」では、『SUNCACAO』としてビーチクリーンのイベントを企画し、環境問題に向き合う機会も作っていらっしゃるんですよ。
材料から見えるサンカカオさんの想い
カカオ豆はもちろん、お砂糖・はちみつ・ごま油など、チョコレートに関わる全ての材料が、パティシエご夫婦によって選び抜かれたもの。
美味しさはもちろん、栽培された環境や栄養面の視点も、とても大切にされています。
●カカオ豆(ガーナ産)
国際協力NGO『ACE(エース)』が支援する村で採れた、チャイルドレイバーフリーのカカオ豆を使用しています。
ドライフルーツのように凝縮感のある味わいで、コクや香ばしさも感じられるガーナ産。
全体的な味のバランスが良いため、『サンカカオ』の多くの商品に使用されています。
●カカオ豆(インドネシア産)
京都にある『DARI K(ダリケー)』が現地で栽培指導、発酵指導しているカカオ豆を使用しています。
『ダリケー』は、『サンカカオ』のパティシエご夫婦が勤めていた会社でもあり、実際に現地のカカオ農家さんを訪問されたことがあるそう…!
味わいは酸味とスパイスやトロピカルフルーツを思わせる香りがあり、少しマニアック。
酸味を生かした生チョコがとても美味しいですよ。
●きび砂糖
『大東製糖』さんが製造している『喜美良(きびら)』を使用しています。
奄美諸島産さとうきびを100%使用し、天然のミネラルを残す独自の製法で自然結晶。
精製されたお砂糖と比べて、カリウム・カルシウム・マグネシウムがたっぷり!
コクのある優しい甘さで、カカオ豆との相性も抜群です。
●ごま油
『九鬼産業(くきさんぎょう)』さんの「太白ゴマ油」を使用しています。
「太白ゴマ油」とは、ゴマを焙煎せずに生のまま搾った100%純粋のごま油のこと。
元々はバターの代用として使い始めたそうですが、無臭でカカオの香りを邪魔をしないことや、
ビタミンEやセサミンなどの栄養が豊富なこともあり、バターを使用していた商品すべてを「太白ゴマ油」に切り替えられています。
失敗したことが悔しくて、お菓子を作り続けました。
ここからは、『美観堂』スタッフの久保が、ちゃいさんにインタビューした模様を織り交ぜながら、お届けします。
今日はよろしくお願いします!
まずは、ちゃいさんの簡単なプロフィールを教えてください。
はい。1992年5月生まれ、岐阜県大垣市上石津町の出身です。
3兄弟の真ん中で、姉と妹がいます。
小さい頃から、「チョコレート屋さんになろう!」という夢があったんですか?
いいえ、幼少の頃は魚が好きで、よく絵を描いていました。
『川のぬし釣り』っていうゲームを知っていますか?
それがとても好きで、大人になったら漁師になろう!とも思っていたんですよ。
あら、小さい頃からスイーツに興味があったのかと思っていました!
では、いつ頃からお菓子作りに目覚めたんですか?
きっかけは、中学1年生の冬休みにロールケーキを作ったことですね。
やり込んでいたゲームをクリアした後で、結構退屈していたんですよ(笑)
そこで、たまたま姉が借りてきたお菓子作りの本を読んでいたら、食べたくなったんだけど、姉に頼んだら「自分で作ったら?」と。
「まあ暇だしやってみるか!」と挑戦してみたのがきっかけです。
「自分で作ったら?」と言ってくださったお姉さん、グッジョブですね。
最初からうまくできましたか?
いえ、本を見ながら作ったのですが、見事に大失敗。
でもそれがなんか悔しくて、何度も作っていくうちにのめり込んで行きました。
そこですよねえ。飽き性の私だったら「だめだ!やーめた!」ってなっちゃいそうなところ。
そこで「悔しい」って芽生えた気持ちが、今の原点に繋がっているんだろうなあ。
結局その年の夏までに、シフォンケーキやガトーショコラ、シュークリームなど基本的なものが作れるようになって、次はイースト菓子にチャレンジしました。
失敗を繰り返したものの、食パンやフランスパン、サワーブレッドなど、イーストを入れて起こる変化が面白くて。中学2年生の夏休みが終わる頃には「将来はパン職人になる!!」と決めていたと思います。
その後、専修学校への進学を希望したそうですが、ご両親の勧めもあり普通科の高校へ。
高校3年間でも食への興味は尽きず、卒業後は京都の製菓専門学校へ進学されます。
カカオの農園で感じた、生産者に貢献したいという思い
京都での学生生活はどうでしたか?
とても大きな出会いがありました!
まずは、チョコレートが大好きな友人と出会ったこと。
その子と話をしているうちにチョコレートに興味が湧いて、僕が京都に進学した年にオープンした『DARI K(ダリケー)』というお店でアルバイトをしました。
『ダリケー』、恥ずかしながら名前だけは聞いたことがあります…。
どのようなチョコレートを作っているお店なんでしょうか?
簡単にいうと日本で「Bean to Bar チョコレート」を始めた先駆けのお店です。
初めて食べた時の感動や、理念に共感してお手伝いをさせてもらっていたのですが、その流れで20歳の時にインドネシアにあるスラウェシ島という島のカカオ農園にも連れて行ってもらいました。
スラウェシ島、初めて聞いた名前です…!
実際に見に行かれて、いかがでしたか?
カカオ豆って、当たり前だけど人が作ったものなんだなということを実感しました。お父さんがカカオを収穫して、お母さんが料理を作って、子どもたちはカカオの森で遊んでバナナを食べたりココナッツを取ったり…。日本でチョコレートを作っているだけじゃ見えてこない人々の暮らしや営みがそこにありました。
私も『美観堂』で働いていて感じることがあるのですが、実際に作り手さんの顔を拝見したり、製造過程に触れたりすると、「この商品に込められた思いをしっかりと伝えなきゃ!」と背筋がシャンとします。
ちゃいさんは、現地の暮らしを見て、何か思われたことはありましたか?
カカオ豆を扱う責任みたいなものを感じました。
元々、「将来はお店を作りたい!」と思っていたのですが、生産者の人に何らかの形で貢献できるような仕組みを作ったり、カカオのストーリーなども伝えたりしたいなと。
大きくいうと、自分の事業を通して何らかの社会貢献ができるようになりたいと思いました。
この経験は、ちゃいさんの中でとても大きなものとなり、製菓専門学校卒業後は、そのまま『ダリケー』に就職されました。
その後、同じお店で出会った奥様と結婚し、地域おこし協力隊として奥様の地元である岡山県倉敷市にお引っ越し。
今は、ご夫婦のチョコレートショップ『SUNCACAO』を運営されながら、『美観堂』の姉妹店である『はれもけも』の店長も勤められています!
“ ゼロウェイスト ” を実行するため、実店舗をオープン
2018年7年のスタート以来、店舗は持たず、イベント出店や卸などで活動してきた『SUNCACAO』さん。
イベント先でお客様に「店舗はありますか?」とお伺いされても、「いつかはしたいですね〜」と答えていたそうです。
そんな中、2021年1月に実店舗をオープン!
少し急なオープンとなった背景には、ちゃいさん夫婦の「ゼロウェイスト」に対する思いがありました。
店舗オープンおめでとうございます!
私も先日伺いましたが、量り売りが新鮮で楽しかったです!チョコレートの他に、お塩やパスタなども販売されているんですよね。
ありがとうございます!
そうですね、他にもドライフルーツや搾りたての有機ピーナッツバター、環境に優しいエコタワシなどの雑貨も販売しています。
店舗の名前ですが『SUNCACAO』ではなく、『Sunny Pantry(サニーパントリー)』と違うお名前にされていますが、どんな理由があるんですか?
来店してくれた時にも分かったと思うんだけど、店舗はチョコレートだけでなく、食品や雑貨なども販売しています。
今後は、米粉の食パンなども作って置けたりできたらいいなあと思っているんだけど、そんなふうにチョコレートに限らず、人にも環境にも優しくて美味しいものを広めていきたいという思いから、この店名にしました。
「量り売り」というのも特徴的ですよね。
このスタイルは当初から考えられていたんですか?
元々『SUNCACAO』の活動をする中で、環境問題を踏まえてパッケージもなるべくプラスチックフリーにしていきたいなと思っていました。
夫婦で考えて行く中で辿り着いたのが「ゼロウェイスト」という考え方なんですよね。
ゼロウェイスト?
ゼロウェイストとは、ゴミをゼロにすることを目標に廃棄物を減らすこと、そもそもゴミを生み出さない取り組みのことです。
ゼロウェイストを実行するなら、量り売りのお店がしたい、なるべくゴミを出さないライフスタイルを実行して早く広めたい!と思い、オープンさせたんです。
確かに!
マイ容器を持参して好きなものを好きなだけ買えば、ゴミも出ないし食品ロスもないですもんね。
そうですね。
楽しみながらお買い物をしてもらった結果が、エコに繋がっていけば最高だなと思います!
『SUNCACAO』オススメの商品
この記事を作成するにあたり、『SUNCACAO』さんのほとんどのチョコレートを試食した『美観堂』スタッフの久保。
僭越ながら、そんな私のお気に入りラインナップを紹介させていただきます!
●たべるカカオ 低温焙炒ガーナ70%
初めて食べた時に、なんだこれは!とびっくりしたチョコレート。
ちゃいさん曰く、カカオが本来もつ香りなのだそうですが、噛むほどに完熟バナナのような、蜂蜜のようなスパイシーな香りが広がります。
一癖ある独特な味わいですが、カマンベールチーズやブルーチーズが好きな方はハマってしまうはず!
(私がその一人です)
ちなみに、商品名は「焙煎」と間違えられやすいですが、「焙炒(ばいしょう)」です。
焙煎は水で煮出すこと、焙炒は火を使って炒めたりローストしたりすることを指すそうですよ。
●ペカンショコラ(サンカカオ)
苦味や渋みの少ないペカンナッツにビーントゥーバーチョコレートをコーティングした一品。
私はこの商品を通して、ペカンナッツを初めて食べたのですが、クセがなくて食べやすい & 一粒がとても大きくて腹持ちがいい!
仕事の合間、ちょっと小腹が空いたなあ〜というときにピッタリだと思います!
●ととかかばたー
ちゃいさん夫妻の娘さんが乳製品アレルギーだったことから生まれた、牛乳不使用のバター風食品!
ナッツがざくざく入っているため物足りなさは全くなく、むしろナッツの香りと味わいが最高で、朝のパン時間がハッピーになる一品です。
固形なので、クラッカーに乗せたり、バケットに挟んだりするのがオススメ。
実は私、今朝もこのバターを使いました。笑
最後に、ちゃいさんに『SUNCACAO』としてのこれからの目標を伺ったのですが、返ってきた言葉は「20年後くらいにうまく行ってればいいかなあ」という意外なもの。
なんでも、ちゃいさんご夫妻は自称マイペースだそうで、自分たちのペースを大切にお店を少しずつ成長させていければいいな、とのことでした。
周りの空気や速さに惑わされることなく、自分たちのペースをしっかりと分かっているちゃいさんだからこその言葉に、ハッとさせられた私。
それでも、実店舗の開店日は毎日お忙しそうで、いかに周りの皆さんが、ちゃいさんご夫妻の思いに共感されているのかを感じたのでした。
『SUNCACAO』と『Sunny Pantry』のこれからが本当に楽しみです!