こんにちは。
美観堂』の高羽です。

美観地区の素敵なお店をご紹介するコーナー。
今日は、130年の歴史を誇る『吉井旅館』さんをご紹介します。

はじまりは、日本の産業発展を担う倉敷の工員社宅

美観地区の街並み

吉井旅館さんのはじまりは明治22年にさかのぼります。

この頃は、倉敷を拠点に一大繊維産業を興そうと設立された『倉敷紡績(現・クラボウ)』ができたばかり。
イギリス式の最新紡績設備を備えた倉敷本社工場が出来上がったころでした。

この倉敷紡績の社長が、のちに岡山を代表する実業家となった『大原孫三郎(まごさぶろう)』。

「わしの眼は十年先が見える」という言葉も有名な孫三郎は、会社が大きくなるにつれ、当時としてはとても先進的だった工員の寮を整備していきました。

吉井旅館の初代『吉井松太郎』さんが孫三郎からの依頼でつくった社宅が、のちに吉井旅館となったんだそうです。

吉井旅館入口

現在の女将『永井圭子』さんで5代目。

圭子さんのお母様が女将の代で「吉井」から「永井」へ名字は変わりながらも、130年以上もの間、血縁で継承されてきた旅館なんです。

経営理念は「また来たい旅館に」。シンプルな理念だからこそ1番大切なのはおもてなしの心

吉井旅館室内

旅館としては創業130年の吉井旅館さん。
建物自体はなんと築280年の町家をつかっています。

しかも、1度も建て替えることなく改築、増築してきたんだそう。

江戸時代の建物を活かした伝統的な造りと、和洋折衷の調度品で仕立てられた館内を歩くと、明治時代にタイムスリップしたような感覚になります。

西洋の文化が入ってきた中で、すべてを西洋のものにするのではなく、古い日本のものに固執するでもなく、古いものと新しいものの良さを調和して育む。

そんな選択を取り続けてきた、吉井旅館の先代のみなさんの美意識、とても素敵だなぁとしみじみと感じました。

吉井旅館

そんな今と昔が融合する空間づくりをされている『吉井旅館』さん。

女将さんに大切にされていることを伺ってみると、とてもシンプルな回答が返ってきました。

「また来たい旅館に」と思っていただくこと。

「また来たい旅館に」
これが旅館の経営理念だそうです。

お客様に「また来たい」と思ってもらうためにはどうすればいいのか。
吉井旅館で働かれているみなさんは常に考えて接客をされているんだそう。

旅館として目指すところがシンプルかつ抽象的だからこそ、お客様ひとりひとりに合ったおもてなしができてらっしゃるんだろうなぁ…。
お話を伺いながら、少し感動してしまいました。

坂本龍馬も立ち寄った!?趣が異なるそれぞれの客室

吉井旅館

吉井旅館さんの部屋数は全部で6つ。

古民家を改修しているので、一部屋一部屋趣がまったく違うお部屋となっています。

庭に面した縁側のあるお部屋。
庭にあった道具蔵を改築したお部屋。
ご家族やグループでお泊り頂ける大きな部屋。

いろいろある中で、僕が1番惹かれたのは、『かえでの間』というお部屋。

吉井旅館かえでの間
吉井旅館かえでの間

実はこのお部屋、『坂本龍馬』が泊まったという言い伝えがあるんだそう。

まだ吉井旅館さんができる前、この建物が商人の町家だった江戸時代末期に、京都へ向かう坂本龍馬がこのお部屋に宿泊されたんだそう。

「坂本龍馬と同じ部屋に泊まる」

なんという字面…!
なんという体験…!!

ご近所さんでいつも出勤のときに通っている『吉井旅館』さんに、まさかそんな歴史があったとは。

勉強不足の自分を恥じるとともに、美観地区で暮らす人間として、とても誇らしく、いろんな人に知っていただきたい話がひとつ増えて嬉しいです。

吉井旅館貸切風呂

吉井旅館さんでは、2つの貸切風呂も無料で利用できます。
檜(ひのき)と高野慎(こうやまき)。

希望の時間を到着時に仲居さんへお伝えすればOKだそうです。

また、ご希望の方には、お部屋でのアロマテラピートリートメントも有料でしてもらえます。

お部屋に来てもらってアロマオイルマッサージ。

僕はこんな贅沢を今までの人生でしたことがありませんが、今この瞬間将来したいことリストにばっちり追加しておきました。

若い感性が創る、地産地消にこだわった瀬戸内の豪華会席

吉井旅館の会席

吉井旅館さんの料理長・川上さんは、現在45歳。
なんと、25歳のときから20年間、料理長としてこの旅館を背負ってきました。

若いころから料理長をつとめ、伝統をふまえつつも、若い感性でつねに新しい会席料理に挑戦してきたんだそう。

そんな料理長の振る舞う料理は、瀬戸内海の魚に地元産の野菜が中心。

吉井旅館会席

季節の旬の素材を使うことはもちろん、季節の先取りも欠かしません。
まだ地元では口にできない食材を取り寄せて、初だしとしてお客様に提供することも大切なおもてなしのひとつだと教えてくださいました。

吉井旅館会席

また、旅館にはうなぎ屋『うなぎ乱亭』さんも併設されています。

うなぎ乱亭
うなぎ乱亭のうな重

国産のうなぎを使った肉厚でふっくらなうな重は、吉井旅館さん自慢の逸品。

この記事を書いている現在の時刻は夕方17:00。

この時間帯に目にも美味しい会席料理とうな重の写真を見るのは、お腹の虫への刺激が尋常じゃありません…!

130年の伝統をぜひ体感しにきてください

吉井旅館

江戸時代のそのままの姿を今に伝える建物。
江戸時代の建築に現代の調度品が融合した館内とお部屋。
瀬戸内の旬に料理長の感性を注いだお料理。
仲居さんたちのおもてなしの心。

ぜひ、130年以上続いている旅館の伝統を、五感で感じにいらっしゃってください。

『吉井旅館』アクセス方法

JR倉敷駅より、徒歩約10分。
倉敷美観地区の本町通りに面しています。

〒710-0054 岡山県倉敷市本町1-29
TEL:086-422-0118
ご予約・空室確認は下記よりご確認ください。
『吉井旅館』空室確認

この記事を書いた人

高羽開

美観地区の古民家で暮らす27歳 。
学生時代は東南アジアのゲストハウスを転々とした旅好きで、サーフィンとウクレレの後の飲酒をこよなく愛しています。